第615話 小さな怪我
「いったっ」
今思えば最初の怪我は紙の端で指を切ったことだろうか
「地味にいてぇ」
絆創膏を貼るまでもない小さな怪我。しかし、時間がたてば少しだけ血がにじんできた
書類に血が付くのも嫌だな、とセロハンテープを指に巻いて止血する
仕事を終え、帰宅する
階段を上り、2階へ向かう
「いたっ」
痛みに手を引き寄せる。見ると、木でできた手すりにささくれのようなものが出来ていて、それにひっかけたようだ
「ったく、ついてねぇな」
ささくれだった木を爪で取る。指先にささった場所から少しだけ血が出ていた
「もったいないけど、絆創膏を貼るか」
セロハンテープじゃ止められないほどには血が出ていた。痛みはそれほどではないが、やはり血が布団やタオルにつくのが嫌だったからだ
洋式のトイレに入る
「痛い!」
尻に画びょうが刺さったような痛みに襲われる。見ると、洋式トイレの便座が少し割れて、そこがとげのようになっていた
「なんか、怪我の度合いがひどくなっていっているような……」
最初は切り傷。次は刺し傷。次も刺し傷ではあるが、まるで何かに切られたかのように結構な傷になっていた
そろそろ寝るか……と、布団に横になる瞬間、嫌な予感がしたので振り返って布団を見た
すると、枕から人の人差し指が生えていた。それも、爪がひどく鋭利に尖っている
もし、あのまま横になったならば、その鋭い爪が俺の首に刺さっていた事だろう
俺は慌てて神社に走り、片っ端からお守りを買った。ちなみに、この神社は無人販売でお守りを売っている
これで大丈夫だろう。さて、帰るかと神社の階段を下りる瞬間、俺の足首を何かが掴んだ
そこからの記憶は俺にはない。幸い、頭を縫いはしたけれど命に別状はなかった
「さあ、点滴の時間ですよー」
そう言って入ってきたナースの肩に、白い手が乗っているのが見えた
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