第613話 セロテープ

家にはセロテープが3個ある


なぜなら、各部屋で使うからだ


子供がすぐにどこかへもっていくので、どこへ行ったか分からなくなるたびに買ったのだが、ふとした時に見つかったのでそういう使い方になっている


ある日、セロテープを新品に取り換えた。それを子供がすぐにどこかへもっていってしまった


次の日、セロテープが半分くらいに減っていた


「こらこら、無駄に使うんじゃない。セロテープもお金がかかっているんだぞ」


「僕は使ってないよ」


そうは言うが、子供は息子一人だけなので息子が使ったのでなければ誰が使うというのか


妻も使っていないというし、息子の友達も来ていない


使ったセロテープはどこへ行ったのかと探すと、子供の部屋の天井にめちゃくちゃに貼られていた


「やっぱりお前が使ったんじゃないか。だめだぞ、嘘ついたら」


「僕は使ってないよ! だって、僕は天井に届かないんだもん」


息子が言う通り、息子がたとえ椅子に乗ったとしても天井へは届かない


天井に付いているセロテープのはしっこをひっぱると、粘着力が無いのかあっさりとはがれて落ちてきた


粘着力が無くなるほどべたべたと触れたのか? そう思ってはがしたセロテープを見ると、まったく指紋が付いていなかった


天井に貼るのに全く触れずにつけることは不可能なのに……いったい誰が……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る