第612話 充電器

中古車を買った


中古車と言っても、発売してまだ数年も経っていない新しいものだ


俺が前に乗っていた車なんかよりよっぽど最新のハイテク車だ


ハイブリッド車であるため、電気で走っている間は車内が静かだし、電気が満タンになるようなら充電器なんかで消費してやればロスも少ないと思っている


カーナビ代わりにしているスマホを電源に差しながら走る


今日は隣の県まで走ろうと思っている


家を出たときは10%くらいだったのが、たった1時間で100%近くたまっている


そろそろ目的地へ着こうというときに、中古車販売店から電話が入った


路肩に車を停めてから電話に出る


「もしもし。いやー、車が快適で隣の県までドライブしちゃいましたよ」


「それはそれは。申し上げにくいのですが、お客様がお買い上げいただいた車に不備がありまして、修理いたしますので一度販売店の方までご来店いただけませんか?」


「どこが不備なんですか? 今のところどこも不具合らしいものは無いのですが」


「それが、以前乗っていた方の遺族がおっしゃるには、充電器が壊れているそうです」


「そうなんですか? 家からずっと充電してたんですけど、普通に使えますよ?」


「そうですか。それでも一度確認させてください」


そう言って電話は終わったが、もやもやした気が残った


その夜、ドライブをしている夢を見て、ドライブ中に天気が悪くなり、雷が車に落ちた


慌てて車から降りて避難する途中に、雷に打たれた


これは、前の持ち主が体験した事なのだろうか……それなら、あの充電は――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る