第607話 泣き顔

こんにちは、山内花林です。




最近あった悲しい出来事です




クラスで一人、転校することになりました




前に父親の赴任の関係で揉め、両親が離婚をしたという話を聞いていましたが、とうとうその親と一緒に県外へ行くことになりました




親権を取ったのは父親で、母親には生活能力が無かったそうです




私は直接の友人ではありませんでしたが、それでも全く話したことが無いわけではありません




その子と仲の良かった子達は、思い出の品を渡したり、一緒に写真を撮ったりしていました。この時ばかりは先生も、スマホを持ってきていることに注意することはありませんでした




「きゃあ!」




スマホで撮った写真を見ていた子が一人、悲鳴を上げました




何事かと、何人かの子が集まりました




「か、顔が……」




見ていた限りでは、写真を撮ったときは無理やりの笑顔……泣き笑いのような表情だったと記憶しています




気になった私は、隙間からその写真を覗きました




「顔が……歪んで映っているの」




その子が言うには、顔がまるで手振れで撮れなかったかのようと表現していました。ただ、顔以外は普通に映っていたらしいので、手振れではなさそうです




撮りなおしたところ、普通の写真になったそうなので先ほどの写真は消したみたいです




みんなで校門でその子を見送りました




次の日、その子は一家心中したと知りました




子供を諦められなかった母親が、父親の車に細工をして交通事故を起こさせたようです




母親は多少の怪我をして自分が面倒を見るつもりだったと推測されますが、母親は、その子が死んでしまったという結果を知って首つり自殺をしたそうです




だからでしょうか、私だけにあの歪んだ顔が、まるで交通事故にあってひしゃげたような顔写真に見えたのは……

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