第604話 檻

「助けてくれ!!」




俺は目が覚めると檻の中だった




今のところ檻の外には誰も居ない




しかし、檻の中にも誰も居なかった




「誰か! 誰か居ないのか!!」




大声で叫ぶが、誰も来ない




それからしばらくして、叫び疲れた俺のもとへ誰かが来た




「やっと静かになったか」




俺からは角になって見えないが、そこに誰かがいるようだ




「助けてくれ!」




「誰が助けるかよ。自分の立場が分かってるのか?」




「な……!」




そう言いながら現れたのはゴリラだった。予想外の状況に思考が止まる




ゴリラがしゃべっていることには驚いたが、これはチャンスだと思って話しかける




「ここから出してくれ! 気が付いたら閉じ込められていたんだ!」




「……気が付いたら? はははっ、記憶でもなくしたか?」




「な、無くしてなんか……」




そう言ったところで、ここで目が覚める前に何をしていたか、どこにいたのか、自分の名前さえも分からなくなっていた




「気が付いてないのか? お前は今、俺と同じ言語を話しているんだぞ?」




自分では日本語を話している気になっていたが、どうやら俺の方がゴリラ語を話しているらしい。頭の中に疑問符が山ほど浮かぶが、今は置いておく




「だ、だから俺は仲間だって! なあ、出してくれよ!」




しかし、そこから出してくれることはなかった。それからしばらくは果物や穀物の食事……いや、エサが与えられた。だが、俺は食事の皿の交換する際の隙を見て檻から抜け出した




「おい! やめろ! 逃げるな!」




「もう捕まるもんか! あばよ!」




俺はゴリラが通れないような狭い通路を通って逃げた。そこは動物園のようで、動物園ではなかった




檻に囚われているのは人間ばかり。しかし、言葉は俺と違って様々だが、ゴリラ語を話す奴は居ないようだった




俺のところへ来た奴みたいに、ゴリラが人間の世話をしているようだ




だが、俺は隙を見て動物園を逃げ出した




「やった! これで自由だ!」




動物園を出ると、そこは……肉食獣が跋扈しているサバンナのようだった




「……は?」




一瞬で俺に走り寄ってきたチーターに食われる




「馬鹿が! 俺たちが保護しなかったらそうなるに決まっているだろ! お前らの文明なんてとっくの昔に滅んでるっつうの。ちっ、せっかくクローンで蘇らせたのに……」










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