第589話 無農薬栽培

私には、苦い思い出がある




あれは、田舎の食堂へ入った時だ




たまたま、知り合いが見つけた食堂で、家族だけで経営しているようだった




売りは「すべて自家栽培の無農薬野菜です」という安全性だった




近年、やれ残留農薬だ、やれカドミウム含有量だ、やれ化学肥料が体に悪いなどと、健康被害と呼べるかどうかも怪しい事に注目されている




だからなのか、店の中はそこそこ客で埋まっていた




秋も近かったが、まだ暑い日も続いていたので、私と知り合いは最初にビールと枝豆を頼んだ




ついで、自家製のソバがあるというので、そちらも頼んだ




ビール瓶とジョッキ、枝豆が来たので乾杯した




やはり、暑い日のビールはうまい




そして、100%無農薬の枝豆を口に入れ、さやを噛む




プチュ




口の中いっぱいに、苦みが広がった




あわてて空の取り皿に吐き出す




すると、枝豆の中には丸々と太った虫が入っていた……




ビールで口の中をゆすぎ、苦みをとる




しばらく耐えた後、そばが来たのでそばで何とかごまかす




私は、2度と無農薬栽培の野菜を食べないと誓った

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