第590話 UFOキャッチャー

人気のゲームセンターで、一台だけ誰も寄り付かないところがある




角に置かれたUFOキャッチャーだ




他の躯体とは離れて設置されているそこには、景品として奇妙なものが置かれていた




一つは、お札




一つは、藁人形




ただそれだけならば、ネタとして、友人同士の悪ふざけや身内の罰ゲームなんかでやりそうなものだが




しかし、誰も寄り付かない。寄り付きにくい雰囲気があった




感覚的に「あれは本物だ」と思わせる雰囲気がある




特に、お札なんてどうやってもキャッチできないだろう




それなのに置かれている、売れてないのに片付けられていない




そんな1台を除けば、人気のゲームセンターである




気になったので店員に聞いても、「店長が放っておけって言うから……」と歯切れの悪い返事だけだった




ある時、普段見かけない店員を見かけたので聞いてみた




話してみると、それは店長だった




店長に直接話を聞いてみる




「ああ、あれね。あれは、お客さんの悪い気を吸い取ってくれるんだ。だから、お客さんもイライラする前に景品が取れたり、当たったりするからストレスなく遊んでくれる」




そう言って、店長は理由を話して去っていった




私は、それならあの藁人形を取ったらどうなるのかと悪戯心が沸いた




お金はきちんと入れれるようで、100円入れると確かに動く




地面に置かれているお札にはアームが届かないので、藁人形の方を狙う




藁人形を挟むようにアームが動き、その瞬間--藁人形がアームを避けた




何が起こったのか分からないが、ゾクリと、藁人形に睨まれたような気がした




視線を感じて後ろを向くと、去っていったはずの店長がいた




ニヤニヤしながら




「その台をやるとね、今までたまっていた悪い気が移るんだよ。ご愁傷さまだね。これ、少ないけど気晴らしに使ってくれていいよ」




そう言って店長は私に1万円を1枚手渡してきた




私はその時「得した!」と思ったけれど、それからその数百倍損する出来事に会うとは思ってもみなかった……


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る