第576話 スーパー

近所にあるスーパー




大分昔につぶれたが、次の買い手も決まらずずっと放置されている




メイン道路から少し入った見つけにくいこの場所は、不良たちのたまり場にはうってつけなのだろう




入り口のガラスは割られ、中も荒らされていた




元々何も残っていないが、段ボールやチラシなどはそのまま残されている




そこに、不良たちが持ち込んだカップラーメンなんかのゴミが散乱している




いつしかそこに、よくないものが住み着き始めた




中に居ると、入り口に人の気配を感じる事があるが、当然のようにそこには誰も居ない




また、夜中になるとバックヤードから何かが動く音がするが、やはりそこには誰も居ない




気味が悪くなってからは、不良すら近寄らなくなったが、代わりに浮浪者が住み着くようになった




浮浪者は、そんな現象が起きても気にすることなく住み続けていた




「誰だ?」




そんなある日、とうとう姿を現したのか、小さな子供の影が棚の横に見えた




浮浪者は、近所の子供でも遊び場にし始めたのかと思って追い出そうと思った




しかし、棚を覗き込んでも誰も居なかった




「気のせいか?」




そう思って棚の隙間に目をやると、そこには目が合った




「うわっ!」




誰も居なかったはずの棚の向こうから見つめる目




だが、その目が何かをしてくるわけではなく、じっと見つめてくるだけだ




「なんだ、それだけか?」




浮浪者は、気味が悪いものの害は無いと判断し、住み続けた




数日間視線を感じるものの、それ以上の事は無かったからだ




それからしばらくして、視線が増えている気がした




天井、窓、トイレのドア、床、そこらじゅうから視線を感じる




とうとう、浮浪者ですら近寄らなくなった




そこは今では、夜中になると笑い声や、誰も居ないはずなのに窓に人影が映るらしい

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