第568話 ごはんの宅配

俺はアルバイトをしている




弁当等を自転車で宅配する仕事だ




冷めたり、形が崩れていたら苦情が来るため、できるだけ早く、できるだけ平坦な道を走らなければならない




だから、もっぱら走る場所は道路になる




信号待ちや、止まれを守っていたら飯が冷めてしまう




だから、パッと確認して行けそうなら行く




たまにヒヤッとするようなこともあるが、これでも1年間無事故でやってこれた




それが油断につながったのだろうか




俺と同時に宅配に出たやつと並んで自転車で走っていた




「おっと」




左から止まれをオーバーしてきた自動車を避けるために右に寄る




「あ」




そんな一言が聞こえた




ふりむくのと、隣に並んでいたやつがトラックのタイヤに踏まれるのが同時だった




俺が右にふれたので、そいつは俺を避けようと車道に少しはみ出たのだろう




そこでこけてそのまま下敷きになった




俺は冷静にそう分析していた




タイヤに踏まれ、車道を血が染める




頭がつぶれるより、首がちぎれるほうが容易かったのか、ごろごろと生首が転がっていく




おっと、こうして冷静にみている場合じゃない




早く配達しないと飯が冷める




この家は、とくにうるさい家なんだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る