第559話 黄色いカッパ

「今日は雨かぁ……やだなぁ」




私は、お気に入りの長靴を履きながらそう呟く




もうすぐ、中学校へと登校する時間だ




玄関横に置いてある傘を取り、かばんを背負う




私が雨の日が嫌な理由は、交差点にある




そこで、昔に交通事故が遭ったらしい




信号待ちをしていた小学生に、雨で滑ったトラックが突っ込み、女児が一人亡くなったと




今では花やお供えを置かなくなったくらいには時間が経っているはずだ




でも、雨の日に限り、私にはその交差点で立つ黄色いカッパ姿の女児が見える




今日もその交差点へと近づいてきた




やはり、雨の日にはその姿が見える




道路へ向かって立っている為、表情は見えない




頭まですっぽりとかぶった黄色いカッパ




ただ、そのカッパのすそからは、雨ではない赤いしずくがぽたぽたと地面を濡らしている




その姿は私以外には見えていないようで、交差点に立つ他の学生や、会社へ向かうサラリーマンは気にすることなくその交差点に立っている




私は、信号が変わるまでその交差点に近寄らないようにし、信号が変わったら一気にわたる




その時にその女児の横を通るのだが、その女児が交差点をジッと見つめたまま動くことは無い




だからその日も、そういうものだと思っていたのだが




信号が変わり、横断歩道へ向かう




いつものように女児の横を通り過ぎ――ガッと何かにカバンを掴まれた




カクンと立ち止まり、何事かと振り向く




すると、私のカバンを掴んでいたのは、そのカッパの女児で――




「きゃああ!」




はじめてみたカッパの奥の顔は、つぶれ、目玉が飛び出していた




カバンを掴む手も、指があらゆる方向を向き、すそからは何かの内臓が垂れている




私は思わず飛びのく




すると、そこを雨で滑った車が突っ込んできた




「え……?」




その車がその女児の幽霊と重なると、女児は見えなくなった




「……私を助けてくれた?」




それ以来、女児の幽霊を見る事は無くなったが、私は雨の日が嫌いではなくなった

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