第558話 大きな扉
これは夢だと分かる
何故なら、何の脈絡もなく大きな、本当に大きな扉の前に立っているからだ
いや、扉の前というには100mほどと少し離れているが
それでも見上げる程の扉だと言えば、その大きさが伝わるだろうか?
これが地獄の門であるというなら、俺はもう死んでいるのだろうが、幸い昨日の夜はきちんと家で寝た記憶がある
寝ている最中に飛行機でも突っ込んできていなければこれは夢のはずだ
辺りを見回すと、俺の他に何人か見える
そいつらは年齢もよく分からないような暗い顔をしている
男も女も居る。子供は居ない、大人だけのようだ
まるでゾンビの様にそれらの人たちは扉に向かって歩いて行く
俺も釣られてその扉に向かう
夢ならそのうち覚めるだろう。そんな気持ちで
門まであと50m程の所まで来た
一番先頭に歩いている男性がそろそろ門の前だ
すると、門の左右に立っていた石像が動き出した
単なる飾りじゃ無かったらしい。その石像はエジプトの壁画に描かれている、頭が犬で胴体が人間の様に見える
男性は立ち止まると、石像に向かって何やらしゃべっている
言葉は聞こえないが、石像に向かって身振り手振りで何かを伝えようとしているのが分かる
話が終わったのか、男性の身振り手振りが止まると、石像の目が赤く光った
すると、その赤い光が男性を直撃した
「ぎゃああああ!」
今度は声が聞こえる、っとそれどころじゃない。赤い光が男性を燃やし、あっという間に焼けこげさせて、男性は立ったまま動かなくなった
そして、しばらくして黒焦げの男性が重力に引かれるように倒れると、ボフリと灰のように粉々になった
その焼けこげた匂いがこちらまで臭ってきた
「おええ」
しかし、何も吐くものが無いため、えづくだけだ
いま、そんなことがあったのに女性がそのまま像の前まで歩いて行った
そして、先ほどの男性と同様に身振り手振りを加えて石像と話す
こんどは、像の目が光ることなく、大きな扉が少しだけ開いた
少しと言っても、扉はものすごく大きいため、人一人はゆうに通れるだろう
実際、その女性はその隙間を通って中へ入っていった
あんなに大きな隙間なのに、不思議と扉の中は見通せなかった
女性が完全に中に入ると、自動的に扉もピチリと閉まった
俺は立ち止まったまましばらく見ていたら、像に焼かれる者、扉に入れる者の2択のようだ
ただ、焼かれる人の方が多いように思える
それは何かの選別に見えた
俺の周りに誰も居なくなった
俺の番なのだろうか? 心当たりは全くなかったが、扉に向かうしかないように思えた
すると、あれほど全く静かだった石像から声が聞こえる
「汝は……この試練を受ける資格はない」
「資格……?」
ここを通るのに資格なんて要ったのか。その資格はどこでとれるのだろう?
なんて思っていると、像の目が光る。ただ、その光は青かった
気が付くと、俺は車とベッドの間に挟まれていた
「……交差点の角の家に住むのをやめよう……」
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