第553話 ゴミ収集車

今日は朝から嫌な予感がしている




いや、3日に1度は嫌な予感がしているし、なんなら何も起こらない日の方が多い




だから、この日も嫌な予感はするけど普通に仕事をしている




俺の仕事はゴミ収集車の運転だ




いくつかの集積所を回り、そろそろ終わろうかというとき




「ちっ、嫌な予感があたったか」




集積所から少し離れたところにゴミ袋が落ちている




ただ落ちているわけではなく、カラスがつついてやがる




その横を、ゴミ袋を抱えたおばあさんが通りかかった




「ぎりぎり間に合ったわね」




すれ違いに俺達は、ごみ袋を拾う




中身は生ごみだったのか、地面に散らばったゴミは湿っているようだ




「やっぱり今日はついてない日だったな」




ゴミを集め、収集車の元へ戻る




そして、ごみを放り込もうと後ろに回った時




「……本当についてねぇ」




上半身を収集車に突っ込んだおばあさんが見えた




相棒がうっかり機械を止め忘れたうえ、おばあさんも律義に自分でゴミを放り込もうとして巻き込まれたのだろう




背骨が完全に折れているように見えるので、すでに生きてはいないだろう




俺はおばあさんの全身をしっかりと収集車の中に収容すると、何事も無かったかのように仕事に戻った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る