第536話 仏間に

親戚の家へ正月に集まった時の事




その家は豪家で、部屋が山ほどあった




小学生の私なんか、体感的に学校の体育館で走り回っている様な感じを受けたものだ




多くの部屋の一つに、仏間がある




ひいじいちゃんとひいばあちゃんの写真が飾ってあるが、私は見たことがないので「ふーん」と知らない人を見るような感じだった




親戚の似たような年の子供たちと遊んでいて、ふと仏間が目に入った




いつもは、きれいにふすまが閉じられていて見ることも無いし、うすぐらい部屋なので入ることも無い




でも、その時はふすまの隙間から何かが見えたような気がしたのだ




かけっこしている子供たちから離れ、仏間を覗く




すると、仏壇に向かって座っている人が居た




見た事のない人だった




でも、私も親戚全員の顔を知っているわけじゃないし、万が一知らない人だったとしても大人の人たちが何とかしてくれると思って特に危険は感じなかった




背格好から、80歳くらいの老人に見える




曲がった背からは、男なのか女なのか区別はつかない




服も、茶色にちゃんちゃんこの様なものを着ているので男女の区別はやはりつかない




真剣に拝んでいるのか、こちらを見る様子も無さそうだ




「何してるの?」




声を掛けられて振り向いた




さっきまで一緒に遊んでいた親戚の子だ




「仏間に誰か居たから」




「誰も居ないじゃない」




私に言われて仏間を覗いた親戚の子は、そう言った




「あれ?」




私が目を離したすきに部屋を出て行ったのだろうか。そんな音もしなかったし、目を離したのは数秒だと思うけど




仏間の隣は居間だから、親戚の誰かは居るはずだ




私は気になって居間へ向かったけど、そこにさっきの老人は見当たらなかった




母に特徴を言って、見たことは無いかと尋ねた




これで「それは亡くなったひいばあちゃんだよ」あたりの話だったら不思議な出来事で終わるんだけど




あいにく




「そんな人見たことも無いわ」




という事だった




あれは一体なんだったのでしょうか?


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