第535話 黒電話が

ジリリリリ




昔懐かしい黒電話の音がする




しかし、ここは駅の地下道だ。当然、電話なんてない




着信音が黒電話の音なのかと思って周りの人を見るが、誰も電話に出る様子はない




音の発生源を追って行くと、その音は動いている様だった




私にしか聞こえていないのか、誰もこの音に耳を傾けていない




音のする方へ歩いて行くと、駅から出てしまった




気味の悪さよりも、好奇心の方が勝った私は音について行く




すると、1件の古い建物についた




庭は草だらけで、ドアさえ腐って倒れている




あきらかに誰も住んでいないことが分かる




しかし、音は中へ続いて行く




「おじゃましまーす……」




誰も居ないと分かっていても、ついつい挨拶してしまう




音を追って行くと、この家の居間についた




するとそこに、黒電話があった




あきらかにライフラインは繋がってい無さそうなのに、鳴り響く電話




私は意を決して電話を取る




「もしもし……?」




「あんた、何してたの! 母さんが倒れたんだよ! 携帯も電源が入っていないし! とにかく病院へ――」




私は何が何だか分からなかったが、駅へ戻り、病院へ急いだ




幸い、命に別状はなかった




あとで聞いた話では、その家は祖母の実家だったそうだ




誰も住んでいない空き家になっていたらしい




祖母が私に連絡を繋いでくれたのだろうか……




こんど、庭の草刈りでもしに行こう

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