第534話 買い取り
何でも買い取ります
そんなお店が町はずれに出来た
もともと何があった場所かは忘れたが、今は平屋建ての「何でも買い取り屋」が建っている
とりあえず、どんなものが置いてあるのか気になったので入ってみることにした
「いらっしゃい」
出迎えてくれたのは、年老いた老婆だった。店が新しいので、勝手に店主も若い人かと思っていたが、そうではないらしい
右左と見てみるが、それほど広くない店内にはいくつかの札が置いてあるだけだった
盗難防止の為、商品は奥にしまっておいて札を持っていったら出してくれるのだろうか
とりあえず、札を見る
しかし、そこには商品名とは思えない様な言葉だけが書かれていた
「殴打10回」
どういう意味だろうか。この札を10回殴るのか?
意味が分からなかったので、その隣の札を見る
「突き落とし」
何を突き落とすのだろう? これは、店主に聞いた方が早いと思った
「すみません」
「なにか」
「あの札って、どういう意味ですか? そして、何を買い取りしてくれるんですか?」
「ここは、人の恨みを買い取りするんですよ。その恨みを他人に売って、自分の手を汚さずに恨みを晴らす……それがここの商品です。あなたにも、やってみたい事がありますか? それとも、誰かを恨んでいますか?」
私にはどちらの希望も無かった。早い話が、復讐の依頼じゃないか。私は恨んでいる人も、人の恨みに手を貸す気も無かった
「すみません。用事を思い出したので帰ります」
「またいらっしゃい」
そう言われたけど、私はもうここに来る気は無かった
その帰り道、ひったくりに遭った。カバンを盗られ、転んだ拍子に顔を強打して歯が折れた
相手はヘルメットを着用していて顔が分からなかった
私は、さっきの店の事が頭によぎった
その時は何故か、警察よりもその店の方が良いと思ったからだ
「すみません! 買い取って欲しいものが……」
そう言いながらカウンターに向かう途中、さっきまであった札が1枚売れていたのに気づいてしまった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます