第524話 掲示板
助けてください
私の命が狙われています
―――私は掲示板にそれだけを打ち込んだ
きっかけはささいな事だった
私の部屋の右隣りの部屋はずっと空室だった
その理由を知りたかっただけだったのに
誰に聞いても理由を知らなかった
このアパートの持ち主である大家さんですら
しかしある日、隣の部屋のドアが開いているのが見えた
それはまるで、私が調べ始めたのを知ったから、何かのフラグが立ったかのように
そんな不思議なことを、私は不気味に思った
しかし、自分自身の好奇心を押さえる事ができなかった
このチャンスを逃したら、もう二度と真相を知る事ができない
そう強く感じた
大家さんですら開ける事が出来ないと言った部屋
開けようとした前の大家さんが不審な死を遂げた原因になったかもしれない部屋
前の大家さんは、路上で誰かに襲われて死んだらしい
それを思い出し、開けようと手を伸ばした手が一瞬止まる
しかし、私の葛藤など関係ないかの様に扉の方が勝手に開いた
開かれた扉……嫌でもその先を見てしまう
アパートのため、玄関は私の部屋と同じだった
いつから開けていなかったのかは分からないけれど、玄関には埃一つ落ちていなかった
使用されていない部屋特有のかび臭い匂いなどは無かった
しかし無臭という訳でもなく、何か錆びの様な匂いがした
私は吸い寄せられるように玄関に入っていった
私の部屋と同じ作りなら、左側に洗面台や風呂、トイレ、キッチンがあり、右側に寝室があるはずだ
予想とは反対に、私の部屋とは間取りが完全に逆になっていた
部屋にはボロボロカーテンがかかっていて、外から中は見えないようになっていた
3階のこの部屋を外から覗いたことは無いけれど――
私はカーテンを開けて明かりを取り込みたくなった
すると――ガリガリ……ガリガリ……
何かを削る様な音がした
それは左側の寝室……そして、壁の向こうは私の寝室の場所だった
私はとっさに見てはならないと、きびすをかえして部屋を出た
すると、まるで玄関に誰かが居たかのようにバタンと扉が閉まり、ガチャリと鍵までかけられた
私は直ぐに自室へ戻った
しかし、それで終わる事は無かった
静かな、本当に静かな部屋の中に、カリカリ、カリカリと音が響く
それは、さっきの部屋の寝室からの音だった
私はすぐに引っ越し先を探した
しかし、誰に聞いても、どこへ行っても部屋が見つからなかった
実家にすら、もう少し待ってくれと断られるほど……
外で夜を過ごすという判断は出来なかった
それは、前の大家さんと同じ末路をたどる気がしたからだ
しかし、日に日に隣のカリカリという音が大きくなってきている気がする
もしかしたら、壁を削っているのかもしれない
壁に穴が開くまであと何日でしょうか
これを読んだ方、私を助けてください
私の住所は――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます