第514話 ざくろ

道で女性とすれ違った




「あの……」




すれ違った女性は、昔このあたりで行方不明になった同級生に雰囲気が似ていたのだ




彼女は学校内でも美少女で通っていて、毎日告白されているんじゃないか? というほど屋上や校舎裏に通っていた




しかし、ストーカー気質の3年生が幾度となく告白し、断られたことで逆恨みし、ある日を境に学校へ来なくなった




そして、その数日後には彼女も学校へ来なくなった




その後、その3年生は誘拐で捕まったが、彼女は見つからなかった




警察は何日も付近を捜索したが見つからず、本人にも口を割るように尋問を続けていたが、まるで記憶でも失ったかのように意味のある返答は聞けなかったようだ




そんな忘れたくても忘れられない同級生に似ているという事は、当然美少女という事だ




あれからすでに十年は経っているからロリコンと言われるかもしれないが……




そして、彼女の肩越しに声を掛ける




「あの……」




すると、振り向いた彼女の顔は……割れていた。ナイフでえぐられたのか、顔が隆起し、まるで花が開いているかのようにひどい状態だった




血はでておらず、現実味が無かった




そして、よくよく見ると、彼女の足は膝から下が切断されたかのように無かった




「私を……見つけて……」




彼女はそう言って地面を指さしたあと消えた。指さした先はマンホールだった




彼女は、俺なら見つけてくれると……下水道局に勤めている俺なら見つけれると思って俺の前に出てきたのだろうか?




俺は居ても経っても居られず、会社に黙ってマンホールのふたを開けた。当時は誰でもマンホールを開けられる状態だったが、今は鍵がかかっていて誰でも入れるわけではない




慎重に降りていく。すると、彼女の霊がスッと現れて指をさしてから消える




案内されるまま歩いて行くと、行き止まりだった




しかし、彼女はその壁を指さす




「まさか……」




壁を良く調べると、セメントで埋められた跡があった。古くなっていてひびわれている




持っていたバールで軽く叩くと、ボロボロとはがれていき、彼女の……骨が出てきた




「ありがとう……」




彼女はそう言って、一瞬だけ生前の綺麗な姿になると消えていった




それから警察が来て事件の解決だなんやらと忙しくなって、当然会社にも怒られたが、厳重注意で済んだ。警察から感謝状がでていたのが効いたらしい




彼女の両親にも感謝された




「やっと娘を墓に入れてやれる……」




俺は静かに仏壇に手を合わせて、頭を下げる




それからしばらくして、あのストーカーだった先輩が死んだと聞いた




何かに驚いた拍子に足を滑らせ、たまたま開いていた古いタイプのマンホールに落ちたらしい




彼女は恨みをはらせたのだろうか

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