第512話 体温計

入り口で検温をしている




感染症が広がってから、人が来る場所では消毒と検温が当たり前になってきた




「なあ、あれって体表の温度を測るだけの機械じゃね?」




「ああ、みてーだな。それじゃあ全く意味ないな」




お店の人もそれが分かっているのか、真夏に並んでいた人に機械を向けるが、たまに出る37.5度にも気にせず店内へ入れていた




「何度になったら引き留められるんだよw」




「だなw じゃあ、おでここすって40度目指すか?w」




なんてやり取りをしていた




すると、俺達のうしろにいつの間にか女の人が立っていた。いつのまに居たんだ?




友人は有言実行と、体温を測る前におでこをごしごしとこすっていたが、普通に36.7度だった




「無駄な努力だったなw」




「うるせぇよw」




測った体温は、横のモニターに表示されるのですぐにわかる




次に俺の後ろに立っていた女性が測られる




俺はなんとなく気になって見ていた




すると「35.2度」だった




「は?」




「どうした?」




「あの女性……」




友達に「体温低いぞ」と、そう言おうとした時、女性がこちらを睨んできた




その目は濁っていて、まるでゾンビのようだった




俺は怖くなって足早に人の多い店内へ入っていった




それから、店内でその女性を見かける事は無かったが、時々後ろが気になった

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