第505話 お化け屋敷

怖がりなのにお化け屋敷が好きだ




夏になると、いろいろなところで開催されるお化け屋敷




そういうところにふらりと立ち寄るのが好きだった




一時期だけ設置されるお化け屋敷は、広さも狭く、設置されている機材も大したことは無いので怖くはない




だが、そういう雰囲気を楽しむのがいいのだ




一時期だけ雇われたアルバイトなのか、少しぎこちない動きのゾンビや、お客に当てるはずが素通りする糸こんにゃくなんかもあってほのぼのとする




少し気合の入ったお化け屋敷は、空き家になっているところを改造して作られたものだった




黒い布で家全体を覆って暗くし、もともと古臭い家をさらに古めかしく見せる工夫がされていた




元々豪農の家だったのか、結構広い家を区切りされた部屋を順番にまわる




昔ながらの急な坂になっている階段に差し掛かった時、階段の上からバサリと白い服を着た婆さんが垂れ下がってきた




「うわっ!」




びっくりしたのと、降った後もピクリとも動かない事に気味悪さを覚えたが、よくできたマネキンかなんかだろうと思って心臓をバクバクさせながら通り過ぎた




今までで一番びっくりしたお化け屋敷だったと、ゴールした後にまだバクバク鳴る心臓を押さえて休憩する




緊急時に出動するのか、EXITと書かれた場所に待機するスタッフに声を掛けた




「よくできた人形ですね。いままでいろいろなお化け屋敷を見たけど、あれほどびっくりした事はないですよ」




仕事中だからか、そのスタッフはニコリとも、返事すらしてくれなかった




それだけは不満足だが、会話している間に何かあっては困るのだろうと納得してその日は帰った




気に入ったので、知り合いにもそのお化け屋敷を薦めた




そして、出口から出てきた知り合いに感想を求める




「よくできてただろ?」




「ああ、ものすごくリアルな人形だったな。それにしても、どうして誰も居ないんだ?」




そう言われれば……俺たち以外誰も居ない。昨日いたスタッフすら見かけなかった




入り口に行き、受付の人に尋ねる




「今日は他に誰も居ないのですか?」




「ほとんど機械仕掛けなので、スタッフは私だけですよ」


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