第504話 育つ霊
そろそろ引っ越そうと思っていた時、知り合いから安くていい部屋があると紹介を受けた
ファミレスで知り合いに話しを聞くことになった
「駅から近くて南側の部屋なんだけど、何故か長く住む人が居ないんだよね。別に自殺があったとか、殺人があったとか、そう言うのは無いんだけど、住んでる人が病気にかかりやすくなるっていうのかな? 体調を崩して引っ越していくんだよね。その代わり、前に住んでた人が置いて行った電化製品とかほとんど新品状態で置いてあってすぐに入居できるよ。敷金、礼金もいらないし」
「ふーん。なんかどっかにカビが生えてるとか、実は自殺や殺人は無いけど孤独死はあった、みたいな事じゃないんか?」
「ないない。窓も大きくて風通しはいいし、壁紙や床は張り替えたことも無いよ。なんなら見に行くか?」
知り合いがそう言うので、実際に見てから決めようと思った
行ってみると、オートロック式では無いものの、道路には面しておらず、不審者がくればすぐにわかるし、その部屋は2階だったから空き巣の心配も1階よりはマシだろう
知り合いは常に鍵を持っていたのか、この話をするから用意していたのか、部屋の鍵を取り出してガチャリと鍵を開けた
入ってみると、別に空気がよどんでいるとかは無いが、しばらく使われていないのが分かるくらいには埃がたまっていた
「もし入居するなら、その日までに掃除はしておくよ。ほら、お札とか別に貼ってないだろ? 盛り塩も無いし。鍵は交換してないけど、今までの入居者は全員鍵を置いて行っているよ。複製したら分からないけど、前の入居者が戻ってきたことは無いし。どうしても心配なら有料で交換するけど?」
「まあ、ドアのチェーンでもかけて一応対処するよ。目立つ汚れは無いし、確かに電化製品一式揃っているし、比較的新しいな。よし、入居しよう」
俺はさっそく契約書を書いて、来週には入居する事になった
今まで住んでいたアパートは、すぐに次の住人が決まったらしく、俺は自分の荷物をさっそく新居に運び込んだ。知り合いがトラックを手配してくれたのですぐに引っ越しは終わった。もともと物は多く持たない主義だったし
掃除は終わっていたので、荷物をかたづけているとすぐに夜になった
引っ越しのあいさつは明日にすることにして、とりあえず布団を敷いて寝ることにした
深夜3時くらいだろうか。ふと目が覚めると、部屋の中にガイコツが見えた
俺は心の中で
(何が誰も死んだやつが居ないだ。死んだやつが居なくても幽霊が出るなら誰も住まないだろ!)
と思っていると、あっさりとそのガイコツは消えた
知り合いにその話をすると
「そんな話は聞いた事が無い。いや、一度だけ骨と皮だけの女性が見えたやつが居たんだったか……? とりあえず、今月の家賃は無料にするから、もう少し住んでくれよ」
住むなと言われても、もう行くところが無い俺は、仕方なく住み続けることにした
その夜は何もおかしなことが無かった
数日後、また夜に目が覚めた。それと同時に体のだるさを感じた
この間と同じ場所に骨と皮だけの女性が見えた
(これが知り合いが言ってたやつか?)
すると、今度もすぐに消えた
体のだるさだけが残ったが、生まれつき体は頑丈なので、次の日には治っていた
それからしばらくして、また夜に目が覚め、それと同時にまた体のだるさを感じた
そのだるさは以前よりも強く感じた
この間と同じ場所にガリガリの女性が見えた
(この間と同じ奴か? ガリガリだけど、俺の好みじゃねーか)
芸能人に負けないほどの美女だと感じ、俺はその日は文句言わなかった
だるさは2日ほどあったが、3日目には治った
それから数日後、また夜にだるさを感じた
ガリガリの女性は、痩せた美女に見えた。その美女は妖艶にほほ笑むと、消えた
(まさか、俺の生気を吸って生前の姿に戻っていっているのか?)
俺はそんな予感がした
それから、1週間おきに現れるようになった。体のだるさはあったが、それも次の週には消えていた。確かに、体の弱い奴ならこれだけだるくなれば病気にもなるかもしれない
女性は太ることは無く、美女のまま現れるようになった
1週間に1回の邂逅ではあるが、俺と美女の同棲は続いている。これは俺が死ぬまで続けるつもりだ
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