第458話 足を引っ張る

古いビルの非常階段を登っていた時の事




少しやせた方が良いと妻に言われ、エレベータを使うのをやめて階段を使うことにした




ただ、その日はワックスがけがあったらしく、いつも使う階段は使用できなかった




階段は他にもあるが、何故かその時は非常階段を使った方が近いと考えてしまった




非常階段は外にあるため、まあまあ錆があったりするが、ボロくて壊れる程ではない




3階の事務所まですぐだ




2階まで何事も無く登る事ができたが、3階へ行く途中で何かが足を掴んだ




足首を見ると、階段から手が生えていて俺の足を掴んでいるのが見えた




しかし、その手には見覚えがある。特徴的な痣があったのだ




「おまえ……」




それは、パワハラで課長から平社員に降格された同僚だった。そいつは降格に納得いかず、非常階段へ飛び出した




運悪く、何かにつまづいて階段を転げ落ちてあっさりと死んだ




「死んでまで人の足を引っ張るな!」




俺が怒鳴ると、その手はフッと消えた


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る