第447話 きっかけはSNS

きっかけはSNSだった




趣味が合い、年齢も近いという事で、オフ会を開くことになった




向こうはかたくなに会う事を拒否していたのだが、どんな見た目でも驚かないという事を条件に会う事を了承してくれた




SNSでは画像はおろか、住んでいるところの写真さえもアップされていない




趣味は読書ということなんだけど、俺の本当の趣味はガールハントだ




そして、相手はサバを読んだ俺の年と同い年!




見た目は気になるが、こう見えてもストライクゾーンは広い。貞子でもぎりぎり付き合えると思っている




というわけで、オフ会の場所へ着いたのだけど、相手はまだ来ていない。すると、メールが着た




「今日はちょっと向かえそうにない。ごめんね」




ここまで来て「はい、そうですか」と帰れるものか!




俺は返信メールにあるアプリを仕込んで送り返した




よし、あとはこの現在地表示アプリを使って……






その場所は、オフ会の場所から2kmほどの距離だった。歩きで30分ほどかかった




ついてみると、どう見ても空き家じゃね? って感じの家だった




草が生え放題で、インターフォンも壊れている、投げ込みチラシすらそのままポストから顔をのぞかせている




もう一度アプリを確認するが、ここで間違いないみたいだ




「おーい、いるのかー?」




俺はダメもとで家に呼びかける。しばらくして、メールが着た




「なんで? どうやってここがわかったの? 帰って!」




しかし、本人は全く出てくる様子は無い




ドアノブをひねると、鍵は開いていた




「おじゃましまーす」




俺は勝手に上がり込む。中は意外と生活感があるようだった




すると、2階から物音がした。どうやら彼女はそこにいるらしい




「勝手に入るな! 帰れ!」




メールにはそう書いてあったがもう遅い。ここまで来たら絶対に会ってやる!




「お前が……そうなのか?」




2階の部屋に入ると、ほぼ骨と皮だけの女の子が、ベッドに横たわっていた。口はきけないらしく、メールで返事をくれた




「ごめんなさい……だましてた感じになったけど。私は下半身不随で動けないの」




だからなのか、本だけは付近に手に取れるように置いてあった。だから趣味が読書だったのだろう




「介護に疲れたのか、母も最近見なくなって、ご飯も食べられなくて……。私ももう、生きるのはいいかなって思ってたら、ちょうど君と趣味が合って、少しは生きてみようかなって……。だけど、生きたいのか死にたいのか分からなくなって、助けを呼べばいいのかどうかもわからなくなって」




女の子は涙を流し始めた




たまたま水だけはベッドの横に置いてあったから、餓死せずに済んでいるのだろう




「生きろ。今救急車を呼んでやる」




それから数日後、栄養失調で死にかけていた彼女は、ぎりぎりのところで助かったようだ




母子家庭でお金も無く、入院させることも出来なかったのだろう




今は俺が彼女を養っている。最初に見たときは骨と皮でミイラぎりぎりだったけど、食事をきちんととった彼女は可愛かった。半身不随も、手術すればなんとか治るらしい




「よかったな」




「ええ、全部君のおかげだよ。ありがとう、愛してる」




そして、来年俺達は結婚する予定だ




そして最後になるが、不思議なことに……あの家からは餓死した母親が台所で見つかった。死後1か月は経っていたようだ。自分の分のご飯も娘に与えていたようで、最後の最後に作ったのであろうご飯は腐敗していたらしい。




彼女には、母親は介護に疲れてどこかへ失踪した事にしたほうが良いのだろうか……?


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