第437話 アトリエ

あるアトリエを見に行った時の事だ




個展という事で、有名かどうかは知らないが、近くでやっていたので見に行った




入場料は300円と、高いのか安いのか分からない




まあ、見てから判断するか




アトリエという事で、そんなに広い場所でもないが、普通の家よりは広いくらいか




直射日光を避けるためか、厳重にカーテンがしめられ、内部も薄暗い明かりになっている




そして、肝心の作品はというと、粘土細工のようだった




しかし、題材が悪い。お化け屋敷と言った方が良いと思うような作品ばかりだった




右手の作品はまあいいとしよう。どこにでもあるものだし




ただ、片足と言うのは微妙だ。長靴なら分からなくも無いが、片足だけ置いてあると義足にしか見えん




次は胴体だ。手も足も首もついていない胴体がポツンと置かれている




途中には、なんか崩れかけた何かやら、腕なのか丸太なのか分からないもの、苦悶の表情を浮かべた写真などがあり、最後に首が置いてあった




その首は、写真に写っていた男性にそっくりだった




完全に写真を覚えているわけではないが、本物そっくりに見える。まるで、本人から型をとったかのような




ただ、型を取ったのではない証拠に、髪まで……ほんも……の?




「いかがですか?」




俺が髪に触れようとした瞬間、アトリエの主に話しかけられた




「いやあ、本物そっくりですごいですね」




「そうでしょう? 苦労しましたから。ああ、作品には触れないでくださいね? 壊れやすいので」




「……すいません」




俺は謝ると、バツが悪くなったのでアトリエを後にした




次の日、気になったのでもう一度見に行ったら、そのアトリエはガランとして何もなかった




1日だけの展示だったのか?




「あれ?」




俺は昨日話していたアトリエの主の顔を思い出せないでいた

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