第434話 USBメモリ
道を歩いていると、小さな箱のようなものが落ちていた
よく見てみると、それはUSBメモリのようだ
辺りに人は居ないし、交番に届けるのも面倒だ
届けたとしても1000円くらいの価値しかなさそうなこんなものを届ける意味があるのだろうか
放っておけば雨でも降った時にどうせ壊れるだろうし、貰っても分からないよな?
俺はそっとそれをポケットにいれた
買い物を終えて自宅に帰る。風呂に入ろうと、洗濯機にズボンを入れ――
「っと、あぶねー。あやうくUSBを洗うとこだったわ」
USBをテーブルに置いて風呂に入る
風呂から上がり、USBをフォーマット……するまえに、何が入っているかを調べてみよう
もし、重大な仕事のデータとかなら届けたらお礼が貰えるかもしれないし
そう思ってパソコンに挿す。一応、ウィルスが入っていたら困るので旧PCの方で
すると、中に入っていたのは画像フォルダだけだった。文書系統は全くない
「なんだよ……。まあ、いいや。どんな画像が入ってるかな? 案外エロ画像かもしれんしな」
わずかな期待を込めてフォルダを開く
すると、画像にはアイコンは無く、数字の1から順番に数字を付けただけのファイル名になっていた
一応拡張子はjpgなので画像ではあるのだろう
とりあえず1をクリックし開いてみる
「なんだ……こりゃ……」
映っていたのは全裸で横になった女性の画像だった
それがAVみたいな画像なら喜んだのだろうが、あいにく映っていたのは肌が薄紫の、まるで死体――
「まさか、な……」
写りが悪いだけだろうと、2を開いてみる。すると、さっきの女性の体にYの線が引かれていた
3を開くと、メスを胸部にあてた画像が……
「まさか、解剖する時の写真か……?」
4を開くと、体に刺さったメスが……俺はそれ以上次のファイルを開く勇気が出なかった
もしかしたら、警察が証拠か何かのために持ち出した資料かもしれないと思い、次の日、同じ場所に捨ててくることにした。一応、透明な袋に入れて……いや、自然体のまま、当初の通りにしておこう
次の日、俺は拾った場所に近づくと、近くに誰も居ない事を確認してさりげなく捨てる
「おや、落としましたよ?」
「ば、だ、誰だ!」
「誰だとは何ですか……拾ってあげたのに。おや? これは私が無くしたUSBと同じような形ですね」
「馬鹿野郎、俺のだよ。拾ってくれてサンキュウな。じゃあな」
あいつが落としたやつか……? 俺は高鳴る心臓を誤魔化すように足早で人通りの多い場所を目指した
見た目は、30くらいの男性。あいつが解剖医? そうは見えなかった。どう見ても、不健康な引きこもりにしか見えなかった。その割に言葉遣いは丁寧だったが、それが逆に不気味だった
後を付けられていない事を確認し、家に帰る
「ああ、おかえりなさい。知っていますか? そのUSBに発信機が仕込まれていたことを」
「不法侵入か! どうやって入った! いや、どうでもいい。警察に電話……」
ポケットに手を突っ込んだ瞬間、首にメスが当てられた
「それさえ返してもらえれば、文句ありませんよ? それとも、あなたの画像も収めてほしいですか?」
俺は首を振ってUSBを男に渡す。すると、男は「どうも」と言って帰っていった
それ以来、たまに俺の家の郵便受けに、死体を写した写真が投函されるようになった
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