第430話 付箋
タバコ休憩から戻ると、机に付箋が貼ってあった
内容は、資料のミスについての指摘だった
「すんません、直しました」
「おお、資料できたのか。見せてみろ」
上司は、資料を初めて見るかのように読み、OKをくれた
しばらくして、今度もまた机に付箋が貼ってあった
内容は、自分でも忘れていた提出物についてだった
「ありがとうございました、これです」
「今回は締め切りに間に合ったようだな。ご苦労」
それからたびたび付箋が貼られていることがあった
「いつも付箋を貼ってあるんですけど、口で言った方が早くないですか?」
ある時、そう上司に尋ねてみた
「何の事だ? 俺は付箋なんて貼ってないぞ」
いままで上司が貼っているとばかり思っていたのに、貼っていたのは上司じゃ無いという
それなら、一体誰がと思って近くにいる同僚に聞いても誰も知らないという
それもいつも、俺がタバコを吸いに行っている時ばかり……
すると、ある嘱託の先輩から酒の席で話を聞く事が出来た
「昔、すぐにサボって煙草を吸いに行くやつが居てな。ある時、作業中に事故で死んじまったんだよ。事故は一瞬で、本人も死んだことに気が付いていないんじゃないかってくらいだった。そう、丁度お前が座っていた席がそいつの席だ」
もしかしたら、その人が自分の仕事の手伝いだと思って付箋を貼っているのだろうか?
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