第426話 旅館

ネットでもうすぐ廃業するという旅館があったので、何故潰れたのか気になったので行ってみた




外観は古いが、ボロボロという風ではなく、出迎えの女将さん達も居てサービスは悪そうに見えない




荷物を持ってくれ、部屋まで運んでくれる




「ようこそおいで下さいました」




仲居さんが色々と説明してくれ、夕食は18時からとる事になった




廃業するという事でお客さんも少なく、仲居さんがサービスでとお酌してくれたので酒を飲みすぎてしまった




少し寝入ってしまったのか、気が付くと23時を過ぎる頃だった




「せっかくの旅館だし、風呂にも入りたいな」




説明では0時に掃除で閉めるという事だったのでまだ間に合うだろう




備え付けのタオルと浴衣を持って風呂場へ入った




スリッパが一つも無かったので俺の貸し切りみたいなものだ




風呂場には曇りガラスで区切られた露天風呂と、木の扉で区切られたサウナがあった




残念ながらサウナは、人が少ないときはやらないらしく入ってみたけれどぬるかったのでやめた




風呂に入る前にさっさと体だけ洗ってゆっくりつかろうと、頭を洗う




すると、露天風呂の方の戸が開く音がして、俺の後ろを誰か通り過ぎていった




(なんだ、他にお客もいるんじゃないか)




そう思って頭を流し、体を洗う。ふと、気になったのでどんなお客さんが来ているのか脱衣所を覗いてみた




しかし、着替えるのが早いのか、すでに誰も居なかった




せっかくなので露天風呂の方を見てみるか。そう思って露天風呂の方へ行くと、閉鎖されていた




「え? じゃあ、さっきの人は何で露天風呂に……?」




不思議なこともあるものだと湯船につかると、電気が消えた




まさか、もう0時になったのか? 慌てて風呂からあがろうとした瞬間、露天風呂の方の扉が開く音がした




ぺたっぺたっ と水にぬれた足音が響く




俺は足音の方を見れず、何も見たくないと目をつぶった




「お客さん、もう終わりですよ」




「……え?」




気が付くと、デッキブラシを持った旅館の社員らしき男性が立っていた




電気もいつの間にか付いている




もしかして、酔っぱらって寝ていた夢だったのか?




そう思ったが、露天風呂の方のから脱衣所まで足跡がくっきりと残っていた




この旅館が潰れるのはこれのせいか……俺はそう思った

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