第425話 ペンギン
「私はね、ペンギンが嫌いなんですよ」
デイサービスであるお爺さんの家に迎えに行った時の事、ふとそう言われた
「なぜですか? かわいいじゃないですか」
「まあ、世間一般ではそうだろうね。だけど私は違うんだ、いや、ある時までは私も世間一般と同じく可愛いと思っていたさ」
それからお爺さんの昔話が始まった
お爺さんは昔、警備員をしていたそうだ。ビルの1階から5階を定時にまわっていたらしい
そして、ある日上から人が降ってきたそうだ
ドンッという音がして、振り向くと40代くらいの男性が立っていた
いや、立っていたというのが正しいのかどうかは分からなかったそうだ
なぜなら、足がほとんど胴体にめりこんでいたそうだ。垂直に落ちたために衝撃がすべて足にいったのだろう
短くなった足。それがまるでペンギンの足のように見えたらしい
ペンギンも見た目は足が短いが、羽毛の中には長い足を隠していると、ペンギンの骨格標本をみてしっていたため、どうしてもペンギンを見るとその足が胴体にめり込んだ飛び降り自殺者を思い出してしまうらしい
「それで警備員もやめてしまったのだが、今でもペンギンを見るとあの男性の顔を思い出してしまうよ」
それを聞いて私は飛び降りだけはしたくないと思った
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