第423話 魔王

「くっくっく、その程度か勇者よ」




魔王の圧倒的な強さの前に、俺達4人のパーティはなすすべも無くやられていた




俺の左腕は動かなく、後ろを見ると回復役の僧侶が重傷の魔法使いを治療していた




右を見れば、先ほどまで一緒に戦っていた戦士が、首を180度後ろに向けた状態で倒れている。その目に生気は無く、もはや助かる見込みは無かった




「こうなったら、最後の手段をとるしか……」




俺は魔法の革袋から一つの薬瓶を取り出す




「ダメよ勇者! 私はまだ戦えるから!」




そう言って僧侶は静止してきたが、魔法使いは「ごほっ」と血を吐いているところを見るともはや取れる手段は無いように思えた




「なんだそれは?」




「これか? これは俺の力を数十倍に高める薬だ。これを飲めばお前なんて……」




シュンッ




魔王は一瞬にして俺の手から薬瓶を奪って行った




「ばかめ。敵を前にわざわざ説明するなど。どれ、これで世界征服も楽になるな」




魔王はゴクリと薬を一気に飲み干し、空き瓶を地面に叩きつけて割った




「おお、これは素晴らしい。どれ……ファイアボール」




魔王の指から最下級魔法が飛ぶ。しかし、その威力はまるで中級魔法の様で、一瞬で戦士が灰になる




「くそっ……。魔王! なぜこんなことを! 世界を征服して何になる!」




「くっくっく、知りたいか? 私はこの世に生まれてからずっと不思議に思っていた。なぜこんなにも下等な生物が世界を治めているのかと。我々魔族の方が……ぐばっ!」




魔王は急に血を吐いて倒れる




「き、貴様、一体何を飲ませた……!」




「力を数十倍に高める代わりに、1分後に死ぬ薬だけど……。まさか、俺が飲む前にお前が飲むとは思わなかった。悪いとは思ったが、時間稼ぎをさせてもらっていた」




「勇者! すごいじゃない!」




こうして魔王は倒され、世界に平和がもたらされた

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