第421話 赤い水

こんにちは、山内花林です。




掃除の時間、小学校の女子トイレの清掃担当の女子児童が




「きゃああぁ!」




と叫んできました




「どうしたの?」




教室にいた児童のうち、一番その子に近かった子が尋ねました




「トイレの、トイレの水が!」




「トイレの水? それがどうしたの?」




「真っ赤なの! 来て!」




教室で顔を見合わせ、その子がついてきてと再度せかすので、見るだけ見ようとみんなでトイレの方へ行きました




と言っても、男子はトイレの前で待機です。掃除中とはいえ、男子をトイレの中へ入れる事は、抵抗があります




「それで、どこが赤いのよ」




女の子は、一番手前のトイレの個室を確認して言いました。私ものぞきましたが普通に透明です




「い、一番奥のトイレ!」




「一番奥って……使用中じゃない?」




「あれ? ねぇ、誰が入っているの?」




女の子はドンドンと個室を叩きました。しかし、返事はありません




「おかしい、誰も居ないの?」




閉まっているから誰も居ないわけは無いでしょうが、あいにくドアの隙間も無く、誰が入っているのか分かりません




しばらく耳を澄ませましたが、人の気配はありません。しかし、使用中の赤色になっていますし、鍵も閉まったままです




どうしようもないので、一旦トイレから出ようとした時




ジャーッ




一番奥のトイレから水を流す音が聞こえました。やはり誰か居たのでしょうか?




ドキドキと誰かが出てくるのを待っています




ガチャリと個室の鍵が外される音がしました




ギィと扉が開き……




「あれ? 出てこないの?」




そう言って女の子は個室を見に行きました




「変ね……誰も居ないわ。それに、水も別に赤くないじゃない」




私もおそるおそるその個室を見ましたが、見なければよかったと後悔しました




「あれ? さっきは確かに……」




何も無いという事で、掃除の時間が終わりに近くなったので教室へ帰りました




男子たちも




「結局何もなかったのかよ」




と落胆していました




しかし、みんなは気が付いていないようで、あの時水を流した音がしたのに、タンクに水がたまる音がしなかった事




そして、水は確かに赤かった事――




家に帰ってから何か知らないかと母に尋ねました。すると




昔、変質者に刺された女の子が、トイレの中へ逃げ込んだという事があったそうです




幸い、変質者は逮捕され、女の子は重傷ではあったけれど今も生きているそうなので、結局あのトイレの赤い水の謎は謎のままですが……

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