第417話 黒い何か

家の近くに廃校になった小学校がある




市に予算が無いのか、何か使い道があるのか分からないが、ここ数年放置されている




一度、肝試しをしようと勝手に校内へ侵入した高校生が、警備会社に掴まるという事件があったので、警備保障はつけているようだ




そんなある日、夕方の散歩をしているとプールの方からバシャバシャという音がする




当然、小学校は閉校しているので不審者だろう




一体、誰が勝手に入ったんだ? とソッと覗いてみた




すると、プールの真ん中に真っ黒なものが浮いているのが見えた




夕方ではあるが、まだ日が落ちたばかりで明るい。それなのに、その真っ黒なものが何か分からなかった




バシャバシャと音がし、黒い物が浮いたり沈んだりしている




「……亀かなにかか?」




勝手にペットを放したやつでも居るんだろうか。そう思って念のために通報しようとしたところで――




バシャッ




急にその真っ黒いものが立ち上がった。小学校のプールは恐らく水深1mちょっとだろうから、大人くらいの身長だろうか




全身がクマのように真黒く、しかしクマではない証拠に、目だけがぎょろりとしている




人間の全身を髪の毛で包んだような、そんな風貌




そいつは俺と目があうと、プールの水があふれたときに流れる排水溝へ逃げていった




本当に全身が髪の毛のように、排水溝のふたの隙間からズゾゾゾゾッと……




結局、警察に説明のしようもないので通報はしなかったが、あれは下水道にでも住んでいるのだろうか……


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