第416話 老人
その日、私は酔っぱらっていたのだと思います
私はキャバクラで夜遅くまで飲んでいました
「そろそろ終電だけどいいのかい?」
ママがコップに氷を継ぎ足しながら言ってくれた
「大丈夫、大丈夫、最悪タクシーで帰るから」
そう言ってコップの中身を飲み干し、次の水割りを催促する
そして、午前1時を過ぎたころだろうか。さすがに眠くなってきたので店を出た
店内には私しかいなく、ママは「タクシー乗り場まで送ろうか?」と言ってくれたのだが、タクシー乗り場まで500mあるかないかくらいだったので、少し夜風に当たりながら歩けばすぐだろうと思っていた
店を出てタクシー乗り場に向かう途中、遠くに誰かが歩いているのが見えた
ただ、その姿は真っ白で、月明かりの無い夜にしては目立った
私も人のことは言えないが「こんな時間に何をしてるんだ?」と思った
それは徐々に近づいてくる。乗り場までは一本道なので、そいつとは必ずすれ違う事になる
近くになると、それは白い服を着ている老人だと分かった
夜の雰囲気もあって、ぶるりと体を震わせる
すれ違いざま、悪いとは思ったけど老人の方をちらりと見る
「……!!」
驚きすぎて声が出ない。老人は、こちらの方を見ている。いや、見ているという表現が正しいのかどうかは分からない。その老人は、白目だった
立ったまま気絶してるんじゃないのかと思うほどに白目のまま微動だにしない
気絶しているなら、救急車を呼んだ方が良いのだろうか? そう思った時、急に老人が私を捕まえる様な動きをしてきた
私は酔っぱらっていたのが嘘のように走る。頭が冷え、脂汗が背中を流れる
何とかタクシー乗り場まで逃げきることに成功した
そう思った時、空車のタクシーの後部座席に、その老人が座っているのが見えた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます