第398話 道に迷い

キコキコキコ




三輪車をこぐ音がどこからか聞こえる




道を歩く人が山ほどいる




電車が到着したからだろうか? 学生が多いが、スーツを着た男性や白髪交じりだがしっかりとした足取りの初老の男性もいた




「あれ? 俺は何でこの方向に?」




俺は大学生で、学校へ向かっているはずだった




駅があるほうとは真逆の場所にある




俺はあわてて後ろを向き、走る




県外から来たばかりなので、土地勘は無いが大学があるであろう方向へと走る




しかし、どう道を曲がったか、直線では走れず、曲がっているうちにまた駅の方に戻ってきてしまった




授業が始まるまでもう10分も無い




遅刻する……その思いが足を速くするが、大学へと続く道が分からない




「どうしました?」




着物を着た女性が、狭い通路から歩いてきた




どこかの店の裏手になるのだろうか? 旅館の女将さんみたいだが、この辺に旅館なんてない




「道に迷ってしまって……」




「そう。でも、今のままじゃ迷うだけよ? おいで」




俺は時間が無いと思いつつ、半分遅刻を覚悟していたので、女将さんに着いて行く




自動ドアをくぐり、どこかの建物へ入っていった




「ちょっとまってて」




そう言って3分ほどたった時、女将さんは壺を持って帰ってきた




そして、その中から塩を一つまみとりだすと、俺の頭からかけた




すると、あれだけ迷っていた道を……大学への道を思い出すことができた




「ありがとうございます」




「どういたしまして。気を付けてね」




―――俺はそれから大学へと着く事が出来た。それも、授業開始の10分前にだ




学校の帰り、道を逆にたどってみたが、その建物は見つからなかった




俺にはどちらが本当の事だったのか分からないが、誰かに親切にしよう……そう思った

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