第397話 動物園

数年前に廃業した動物園




私の散歩コースには動物園の前を通るルートと、適当に歩くルートがある




そのうち、動物園の前を通った時の事だ




この動物園は、どこにでもあるような動物園で、キリン、象、ペンギン、カバ、猿、サイ、ライオンなど様々な動物がいた




噂では、閉鎖する時に、引き取り手の居ない動物を処分したというものがあった




象やペンギンやライオンなどは、比較的どこの動物園でも人気なため、優先的に引き取られたそうだ




だが、猿だけはそうはいかなかった




縄張り意識が強く、新しい猿を入れても喧嘩が起きるからだ




メスだけなら、まだ何とかなったみたいだが……




私が散歩していた時、動物園の柵を越え、猿が飛び出してきたのだ




そして、私の前方30mくらい先で止まる




種類までは分からないが、山へ行けば猿なんて野生でも居るだろうし……程度に思っていた




しかし、夕方、暗くなる直前の時間帯であったためか、その猿は何か……粘っこいものを感じた




全身の毛がべったりとしているのだ




「きゃっきゃっ」




くるりと振り向いた




距離があるにもかかわらず、その猿の顔は何か鈍器で滅多打ちにされたような、歪んだ顔になっていた




そして、片目は無く、歯も折れていた……




猿は再び「きゃきっ」と鳴くと、動物園の中へと戻っていった




もしかしたら、猿の死骸はそのまま動物園のどこかで、弔われるのを待っているのだろうか?

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