第373話 鍼灸院

潰れた鍼灸院、そこに霊が出ると聞いて行ってみた




2人以上で訪れると現れないという事なので一人で行く




ただ、一人で行ったやつは幽霊が現れた時点で逃げたらしいので、本当かどうか怪しい




ともかく、昼間でもいいから行ってみるか




鍼灸院は、窓ガラスが割られ、カーテンもボロボロになっていた




瓶でも投げ込まれたのか、部屋の中にはガラス以外の破片も見える




暗いときに来なくてよかった。もし、夜中とかだったら普通に足の裏にガラスが刺さって大変な事になっていただろう




この窓は、付近の家からは死角になっているため、誰かに侵入を見られる心配はない




入ってみると、丁度受付横のようだ




そこを通り、施術室へ入る。昼間だというのに、すごくじめっとした感じがする




やはり、やめておけばよかった……そう思って引き返そうとしたが




いつの間にか、入り口に幽霊が立っていた




「うわっ!」




俺は周りをみわたすが、他に出入り口は無い




「勝手に入るな……」




幽霊は、ゆっくりと俺に近づいて、俺に催涙スプレーを撒いた




「がぁあぁあ! 目が!」




そいつは幽霊なんかじゃなかった、人間だ!




俺は組み伏せられ、ロープで縛られた




さらに、何かに縛り付けられた感じがした




「何をする!」




「勝手に入り込んだ罰だ」




少し見えるようになった目で、男を見ると、手には針を持っている




「や、やめろ!」




男は、やめることなく俺の体に針を刺した




「いてぇ!」




治療のために刺すのとは違い、痛みを与えるために刺している感じがした




「俺だってなぁ、俺だってなぁ……」




男は、ぶつぶつと呟きながら俺の体に針を刺していく。身をよじると、刺さっていた針が尚更刺さるので、下手に動けない




しかし、動かないとどんどんと刺されていく




いつの間に気絶していたのか、気が付くと男は居なかった




しかし、体中どころか、顔にまで針を刺していったみたいだ。目立った出血は無いが、じくじくと体中が痛い




痛みをこらえながら、ロープをほどき、体に刺さった針を抜いていく




30本ほどの針を抜き終わり、さあ逃げようと歩いたが、足に透明なロープが巻かれていた




「逃がすわけ無いだろう?」




男の手には、千枚通しが握られていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る