第310話 火事が
「むかつく、つまらねぇ」
本当にマジでなんなんだ
俺は今日、何もかもついていなかった
信号が俺がぎりぎり間に合わない距離で赤になったのにはじまり、その待ち時間に暇にその辺の石を蹴ったら、それは突起物で足を痛めたり、さらに肘をぶつけたり
そしてイライラした気分でスマホのゲームをやってぼろ負けしたのがとどめだっただろうか
俺は苛立ち紛れにスマホを地面に叩きつけてたからすぐ後悔した
「画面が割れちまった……さらに電源も入らねぇ」
最近買ったばかりのスマホが自業自得とはいえ壊してしまったのでもうどうでもよくなったのだ
「歩きたばこ禁止……知ったことか!」
ダメと言われたことをむしろやってやるとタバコに火をつけて歩く
しかし、今の時代じゃそんなことをすればすぐに目立つ。スマホで電話しながら歩いているやつを見るたびに警察に通報してるんじゃないか? と疑心暗鬼になるほどには小心者の俺は、そうそうにタバコを空き家っぽい古びた家に投げ捨てた
次の日、俺がタバコを投げ捨てた家が火事になったことを知った。お昼ではあったが、丁度赤ん坊を寝かしつけて一緒に寝ていたらしく、母親と1歳の娘が焼死したらしい
「俺じゃねぇ、俺は悪くねぇ。そうだ、俺のタバコが原因とは限らないじゃないか」
発火の原因が放火なのかなんなのか、まだ究明されていないので自己弁護に走る。いくら木造の古びた家とはいえ、タバコくらいで燃えるか? と勝手に思う
「そこのあなた」
「え、あ、俺?」
いつの間にか昨日の家に向かって歩いていることに気が付いた。そして、声を掛けてきたおばさんをみる
「あなた、誰かに恨まれるようなことをした?」
「いや、思い当たることは無いぞ」
俺は一瞬、火事の事が頭をよぎったが、犯人が俺とはまだ決まっていない
「そう、でも気を付けたほうがいいわ。あなたの後ろで赤ん坊を抱えた女性がものすごくあなたを睨んでいるから」
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