第311話 鍵の音が

俺は趣味ではあるが、毎日ランニングをしている




夏の暑い日は夜にランニングをしている




真夜中に走るのはさすがに不審者になるので、8時ごろから9時ごろにかけて走るようにしている




普通に住宅街を走るので、歩道がある場所か、車が来たら避けられないような狭い道は通らないが、ほどほど車通りが少ない場所を走っている




ある家の前を走り抜けたとき、鍵をカチャカチャと鍵穴に差し込むような音が聞こえた




普段であれば別に気にする事でもないと思うが、自分が通り過ぎてすぐにその音がしたのが気になったので、少し戻る




「あれ……?」




玄関の前には誰もおらず、家の電気も消えたままでどうみても無人だ




気のせいだったかと思ってその場を離れると、またカチャカチャと音がする




また戻って確認するが、誰も居ない




「まさか、中から……?」




意を決してドアをノックしてみる。すると、ドアノブがガチャガチャと回されてびっくりした




「助けて……」




中から子供の声が聞こえた




俺は走っている間は携帯を持っていないので、隣の家に助けを求めに行った




警察が来てその家のドアをノックするが、返事がない




近所の人の話では、その家の人はもう1週間は帰ってきていないという事で窓を割って入ることになった




俺は当然一緒に入るわけには行かず、外で待っていた




鍵のかかった子供部屋に子供が閉じ込められていたらしく、すぐに救急車が呼ばれたが、脱水症状がひどく、ほどなくて死亡したらしい




ただ、子供部屋に鍵がかかっているため、どう考えても玄関に来る事はできなかっただろうという事だった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る