第302話 赤いマフラー
大学入試センター試験が終わり、冬の風が寒い中、私は駅へ急いでいた
「ううっ、寒い。こんなことならもっと厚着してくるんだった」
元々東北の雪が降る地方に住んでいたため、太平洋側なんて雪が降らないしあったかいでしょ、と勝手に思い込んでいたのが悪かった
普通に風が冷たい。あまり意味も無く首をすくめて寒さに耐える
そんなとき、通りかかった公園を見ると、木に何か引っかかっているのが目に入った
「赤い……マフラー?」
小さな公園で、私が背伸びしてやっと手が届くところにひっかかっていたので、子供が忘れて行ったというよりもどこかから飛んできてひっかかった確率の方が高いと思った
何より、今日は冷たい風が強いので、わざわざマフラーを外す必要が無いと思う
「誰も居ないってことは、要らないってことだよね。もらっちゃえ」
自分に都合のいいように解釈し、マフラーを手繰ると首に巻いた
「ああっ、あったかい。ちょっとお借りしまーす」
返すつもりもないのにそう呟いて駅へ向かった
そのままなんだかんだで受験のために借りたアパートに着いた。明日には地元へ帰る予定だ
夜、冷たい風を感じて目が覚める。真っ暗な闇に何かが揺れてる気がした
「きゃあっ!」
自分の真上の天井から、クローゼットに片付けたはずの赤いマフラーがぶら下がっている
それはまるで上から女性が襲ってくるようにも見えた
「ごめんなさい! ごめんなさい! 勝手に持って行ってごめんなさい! もうしませんから許してください!」
私は近所迷惑も考えず、できる限り誠意をもって大声で謝った。すると、いつのまにか開いていた窓から外へ飛んで行ってしまった
もしかしたら、あの公園まで飛んでいったのかもしれない
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