第294話 舐める

「オラッ靴を舐めろよ!」




「ついでに床もな!」




同級生AとB。俺は高校に転校してきてすぐに不良に絡まれた




最初は仲良くしているように見せていて、カモになると思ったら金をせびってきた




最初は少しだけ金を渡して満足していたみたいだが、最近は段々とエスカレートしてきた




最初は俺の小遣いの一部、次は俺の小遣い全部、次は俺の昼食代、そしてとうとう貯金まで




それすら巻き上げると、とうとう親の金まで持って来いという。それを拒否したら冒頭のセリフだ




「さすがにそれは……親にバレたら……」




「知るかよ! 俺らに関係ねーし!」




「とりあえず、床を舐めて反省しな!」




床……ここ、旧校舎のトイレじゃねーか。ただでさえ誰も居ない校舎のわざわざトイレに連れてきやがって




「なんだその目は!」




「ぐっ」




とうとう腹を殴られ、うずくまる。そして、後ろから頭を押されて床に倒れる




「なにをっ、ギャア!」




俺がしゃべるのと思い切り頭を踏みつけられるのが同時だった。そして、運悪く……舌を噛み切った




「あああああっ!」




「やべっ、俺知らねー」




「おい、俺も知らねぇよ」




そう言ってAとBは逃げて行った。俺は携帯で救急車を呼ぼうとしたが、舌が無いうえに血がのどに入ってしゃべれない




「どうしました? 事故ですか? 救急ですか?」




「ああっ、ああー」




「もしもし? 返事は出来ますか?」




結局俺は助けを呼ぶことも出来ず、死んだ







「ねえ、旧校舎の噂って知ってる?」




「知ってる、数年前に男子生徒が自殺したやつでしょ?」




「自殺かどうかはしらないけど、舌を噛み切った状態で血まみれで発見されたらしいね、死体が」




「それは誰でも知ってるけど、噂って?」




「実は、その時に噛み切った舌が見つかっていないらしいよ」




「普通にネズミか何かが持ってったんじゃ?」




「それがね、この校舎の床を這うように舐めているのを見た人が居るんだって」




「……見ただけ?」




「帰りに、その子の靴がね……唾液まみれだったらしいよ」

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