第293話 イチャイチャしたい

「ねぇ、たまにはどこかへ出かけようよ」




「えぇっ、どこへだよ」




私は大学の夏休みに彼氏を作った。高校まで全く色恋沙汰が無かったため、焦っていたのもあり、草食系っぽい男を捕まえた。正直、タイプというほどではないが、別に不細工という訳でもなかったので告白してみたら、案外あっさりとOKを貰う事が出来た




しかし、彼はインドア派らしく、休日に一緒に遊ぶと言えばゲームばっかりで出かけることが無い




お金を使うことは無いけど、おめかしして彼氏の家に行く私の事も考えてほしい




さすがに夏休み中ずっとゲームばかりのデートでは彼を選んだのは間違っていたんじゃないかと後悔もしようものだ。しかし、付き合ったばかりで振るというのも学生生活を送るうえで印象が悪い。だから、ダメもとでおねだりしたのだがやはりめんどくさそうに返事された




「服を買いに行くとか……無理ならせめて喫茶店でも行こうよ」




「……しょうがないな」




意外にも一緒に行ってくれるらしい




喫茶店に着くと、休日という事もあり人が多い。密かにこういう事もあろうかと人気店を調べていたのに……。それに、店内はカップルばかりだった




「私達も腕くらい組む?」




「いいよ、恥ずかしいし」




イチャツキたいわけじゃないけど、私もカップルらしい事をしてみたいのに




私は飲み物を一つだけ注文し、テーブルに座る。ウェイトレスがお手拭きを2つテーブルに置いて行ってくれた







「ねぇ、あのお客さん見た?」




「見た見た、何あれ、人形に向かってずっと話しかけてるし」




「私、椅子に人形を置くもんだからてっきり後で誰か来るかと思ってお手拭き2つ置いちゃった」




「回収するのも怖いし、ほっとけば」







「今日も楽しかったね」




「た、助けてくれ!」




「なんで? 私たち付き合ったばかりじゃない」




「このままじゃ餓死してしまう!」




「ふふっ、冗談がうまいわね」




私は大型ペット用の檻に閉じ込めた彼氏と、人形のマイク越しに会話している


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