第290話 サイコロ
俺は病院に長い事入院している
俺の隣の部屋にも同じように長い事入院している男性がいるらしい
今日、とうとう医者から余命宣告をされた。手術をしない場合、長くて半年の命らしい
逆に、手術に成功すれば治る可能性が高いとも
ただ、臓器の提供者が居ない。俺の血液型は珍しいらしく、今まで見つからないために長く入院していたのだ
そんなとき、隣の部屋の男性が俺に会いに来た。俺と同じような年、20代後半から30代前半に見える
「余命宣告されたんだって?」
「ああ、そうだけど、俺の個人情報があっさりと……」
「実は、俺もなんだ」
俺にかぶせるようにして言ってきたそれは、俺が文句を言う気力を失わせるには十分だった
「そうか……お互い、長生きしたいものだが」
「ああ。それで、単なる暇つぶしなんだがサイコロの出目で勝負しないか?」
「ああ、いいぜ」
どうせ暇だし、ここでこうしているのも何かの縁だろう
「じゃあ、俺からふるよ。……よしっ、5だ!」
男性はたかだかサイコロにものすごく喜んでいる。俺はその様子をほほえましく思いながらサイコロを拾い、振る
「おっ、悪いな。6だ」
サイコロくらい勝たせてやりたかったが、こればかりは運だ。男性はものすごくがっかりした顔で、無言で退室しようとした
「おいっ、サイコロを忘れてるぞ!」
「もういらない」
俺の制止の声にもふりむかず、退室していった
それからしばらくして、俺の手術が決まった
手術はすぐに行われ、成功し、順調に回復し、退院する事になった
「おめでとう。よく頑張ったね」
「ありがとうございます! それにしても、よく相手が見つかりましたね」
「ああ、もともと相手は居たんだが、余命が君とほとんど変わらなかったんだよ」
「そうなんですか……それで、その人は?」
「残念ながら亡くなられたよ」
「そうですか……余命まで持たなかったんですね」
「いや、サイコロで負けたんだ」
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