第288話 自動書記

今にして思えば、不思議な鉛筆だった




小学校のころ、いつの間にか筆箱の中に茶色の鉛筆が入っていた




色鉛筆なんて筆箱に入れていなかったから、誰かが間違えたかイタズラだろうと思って放っておいた




あるとき、運悪く鉛筆が次々と折れてしまい、茶色の鉛筆を仕方なく使う事になった




ノートをとるだけだから色なんて関係ないし、と思って黒板を写していた




午後だったこともあり、うつらうつらとしながら黒板を写していたのを覚えている




しかし、いつの間にか寝てしまったらしく、チャイムと同時に目が覚めた




「やべ、写し忘れた」




そう思ってノートを見ると、きっちりと書き写されていた。自分でも不思議だったが、別に悪いことは無いので気にしなかったのを覚えている




その後の算数の授業でも、いつの間にか寝てしまっていたが、ノートはきっちりと書き写されていた




しかし、道徳の時間、「死」とは。で議論していた時の事である。これは議論だけなので黒板を使わないはずなのに、いつの間にかノートに発言が書き写されていた




ただ、最後に「俺は死んでいない」と勝手に書き写されたのを見て気持ち悪くなってその鉛筆を使わなくなった




次の日、その鉛筆は筆箱から消えていた

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