第250話 踏切で

カンカンカンカン




踏切で電車が来るのを待っていると、不意に前に居た女子高生と思われる制服の女性が、遮断機をくぐって線路内に入る




「何をしている! 早く出なさい!」




俺が叫んでも、女子高生はこっちを振り向く事すらせずに線路の中心に立つ




ファーンと電車の来る音がした。今から緊急停止ボタンを押しても間に合わないだろう。俺は意を決して遮断機をくぐる




「おいあんた、何をしている! 行くな!」




後ろに居た壮年の男性が慌てて声をかけてくるが、俺は夢中で線路に走り、女子高生を押す




しかし、俺の手はその女子高生をすり抜けた




両手をついてすぐ後ろを振り向くと、口がまるで裂けたような笑顔を見せる女子高生が居た




そして、電車が来たが俺は逃げるのも間に合わず……




ぎりぎり後ろに下がったため、右足首の切断だけで済んだ。さっきの壮年の男性が救急車を呼ぶ。そして、俺のももにきつく首にかけていたタオルを巻いて止血してくれた




「あんた! 何で線路に入ったんだ!」




「俺は女子高生を助けようと……」




「あんたには女子高生に見えたのか……。俺には、亡くなった女房に見えてたよ。あいにく、昨日が命日だったから生きてたなんて思わなかったからな」




怪我が治った後、再び事故のあった踏切に戻ってきた。すると、線路わきには花が添えてあった。昔、小さな子供が線路に入って遊んでいた時に轢かれたそうだ

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