第242話 質屋

質屋を経営していた父が亡くなった




事故で即死と言う事で、何も分からないまま葬儀を終え、遺産相続の話になった




店内にある物は、何が価値がある物か、適正価格はいくらなのか、そもそも質って勝手に換金していい物なのか、何も分からない




ふと、棚の上に置いてある壺が気になった




「これは、売り物なのか?」




紫色で陶器製に見える。両手で抱えて持てるくらいの物だったので、棚から下して見てみることにした




「見た目はただの壺だな……中は……うわっ」




俺はびっくりして壺を落としかけたが、何とか落とさずに済んだ。壺の中にはビッシリとお札が貼ってあった




「なんだこれ……呪われているのか?」




内側すべてに貼ってあるお札。俺は見なかったことにして棚に戻した




すると、いつの間に入り口に居たのか、着物を着たおじいさんが声を掛けてきた




「その壺を取りに来たのですが」




「え? はい」




とりあえず、名前を聞いて名簿を確認すると、たった2千円を借りるためだけに質に入れていた物だった




おじいさんから2千円を受け取り、壺を渡す。どうしても気になったので話しかける




「どうしてお札が貼ってあるんですか?」




「これはね、人の運気を吸い取るんですよ」




「運気ですか?」




「そうです。人は誰しも運気と言う物を持っています。減ったり、増えたりするのですが、これが無くなるとね……」




おじいさんはそういって立ち去った。気になるところで話を切られてしまったが、追いかけて聞くほどの話ではないかと思って店内の片づけに戻った




後日、近所で宝くじの高額当選があったとの噂を聞いた




高額当選したのは、着物を着たおじいさんだったそうだ

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