第241話 家賃が安い

地方から東京に出てきて数年、このボロアパートは取り壊すらしい




もともと、安いアパートを探していたところ、小さな不動産屋で見つけた周りよりも少しだけ安い物件




別に日当たりが悪いとかではないのに安いので、借りる前にカマをかけてみたんだ




「ここ、事故物件ですよね? 何か人の恨みの様な物を感じるのですが」




俺には霊感が無いが、こういうことには鼻が利く。不動産屋の担当者は、あからさまに動揺して「どこでそれを・・」とかいうので、してやったりと値引きさせた




さっきも言ったが、俺には霊感が全くないので事故物件だろうが住み心地に問題なければ別にいいと思っている




そう言う成功例で味を占めてしまったので、今度もそういう方向でアパートを借りることにした




駅に近いのに安い部屋。部屋からは電車が見えるほどだが、音はそんなにうるさくない




「ここ、いい部屋でしょ? どうです?」




俺は今回もかまをかける




「でも、ここ、事故物件ですよね?」




「違いますよ?」




「あっ、そうですか」




じゃあ何で安いのか分からないが、他の人に借りられる前に借りてしまおうと思った




引っ越してすぐに異変を感じた。夜中、ベランダの外に何かが浮いているのに気づく




「なんだ?」




見ると、ベランダの上に生首が浮いていた




「ぎゃーっ!」




俺はすぐにコンビニに逃げて、明るくなったらすぐに不動産会社に乗り込んだ




「あそこ、事故物件じゃないか!」




「違いますよ。確かに、あの部屋のすぐ前に投身自殺した人の首が飛んできたらしいですが、部屋で死んでいないので事故物件では無いです」




不動産屋の言い分に納得いかないが、霊感の無い俺にすら霊が見えたのだ。危険を感じてすぐに引っ越すことにした




「ここなんかどうですか? 事故物件ではないですが、安くしますよ?」




「うるさいわ!」




俺はもう高くてもいいから普通の物件にしか住めないだろう

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