第235話 見えない人
私は一人暮らしだが、2階建ての家に住んでいる
もともと2世帯住宅を予定していたので、2階へは外からも入れるようにドアがついている
結局、息子が同居しなかったから2階部分は要らなかったのだが
妻も病院へ入り、暇な一日を過ごしている
ある時、妻の見舞いから帰ってきて、荷物を玄関に置くと、2階から人の移動するような音が聞こえた
鍵自体は息子も持っているので、もしかして帰ってきたのか? と思い、荷物を片付けてから見に行くことにした
荷物を片付ける間もがさごそと音がしていたので、まだ居るなと思い、玄関で靴を履いた時点で2階のドアが開く音がした
私は「丁度いい、降りてくるのをまとう」と思い、玄関から出て待っていた
普通であれば、すぐ横に階段があるので、降りてくれば絶対に分かる
しかし、なかなか降りてこない。もしかして、音はしなかったけれど部屋に戻ったのか?
と思って2階を見に行った。しかし、ドアには鍵がかかっている
「おーい、居るか?」
一応声をかけてみるが、部屋の中で動く気配はない
1か月に1度は掃除をしているので、足跡などは分からない
念のために、泥棒が入っていないか見ることにした
一旦下に降りて鍵を取り、2階の鍵を開け中に入る
中は何もなく、がらんとしていて人が入ったような気配はない
すると、今度は下から何か音がする
「しまった! おびきだされたか!」
下の鍵をしめていないため、泥棒がまわりこんで侵入したかもしれないと頭をよぎった
慌てて1階の部屋に入るが、誰も居ない
すると、電話がかかってきた
「ついさっき、事故で意識不明だった息子さんが意識を取り戻しました」
息子は事故に遭っていたらしい。病院は連絡が取れずに困っていたようで、意識を取り戻すと真っ先にここの連絡先を教えてくれたと言っていた
私は息子の居る病院へ急いだ。包帯を巻いている息子を見て、案外と元気そうで安堵する
「オヤジの家の事を思い出したら、目が覚めた。2階、綺麗だよな?」
あの音は、息子が家を見に来た音だったのだろうか?
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