第203話 入れ替わり

知り合いのお金持ち夫人が事故に遭ったらしいので、共通の知り合いの提案でお見舞いに行くことになった





幸い、命の別状は無いみたいだが、車に轢かれた怪我がひどいと聞いている





事故からしばらくたってから行くことになった





もう面会しても良いという事でお見舞いに行く





病院に着くと、看護婦さんに案内されて夫人の居る個室へ行った





すると、顔を包帯でぐるぐる巻きにした夫人が見えた





「えっと、どちらさまかしら? 事故で記憶が無く、携帯も壊れてしまって・・・」





夫人は私たちが最初のお見舞い者じゃないのか、先に私達の事を知らない理由を述べた





「大丈夫? 車に轢かれてたって聞いてびっくりしたんだよ。それに、声まで少し変わったように聞こえるわ」





「そうなのよ。事故の時に顔をぶつけたみたいで、顔周りを手術したのよ」





「しゃべり方が違うのも記憶喪失のせい?」





「頭を打ったので、運が良ければすぐに記憶が戻るとお医者様がおっしゃられましたけど、いまだに戻っていないわ」





「私からお金を借りたことも忘れたのかしら?」





「私が借りることは無いわね」





二人は冗談を言いつつ笑い合う。私も愛想笑いをしているが、私は知り合いが夫人から借金していることを知っている。恐らく、ご機嫌伺いのつもりで来たのだけど、記憶喪失と聞いてどこまで覚えているのか探っているのだろう。





結局、本当に記憶喪失らしく、私達と共通の思い出は何も知らないという事だった





「それじゃあ、早く治るといいわね」





「ありがとう。もしよければ、携帯を買い直した時に連絡が取れるように、連絡先が知りたいのだけれど」





「じゃあ、名刺を置いて行くわね」





私達は連絡先の交換用に名刺を机の上に置いて帰った








数週間後、携帯を買い直したという事で連絡があり、再び夫人へ会いに行った





「あら? 包帯が取れたのね、よかったわ。でも、少し雰囲気が変わったかしら?」





「ええ、整形手術もしましたし、記憶も戻らないままなので・・」





夫人は少し残念そうに微笑む





「それで、私達に頼んでいた物はこれでよかったかしら?」





私達は夫人のお願いで、記憶の回復につながりそうなものをいろいろと持ってきた





そして、夫人に色々と思い出を語った





「これで何とかなりそうだわ、ありがとう」











その後、夫人は逮捕された。正確には、夫人に成りすましていた別人が捕まったのだ。本当の夫人は事故の時にすでに死亡していたらしく、山で死体が発見されたそうだ





犯人が捕まったのは、血液検査で血液型が違っていたからである

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