第181話 友達のお見舞いで
これは、ある病院に友達のお見舞いに行った時の話です
当時、私は就職したばかりで慌ただしい毎日を過ごしていました
残業を終え、携帯を見ると1通のメールが届いていました
【秋子が入院したみたい。一緒にお見舞いに行く?】
それは、県内の大学で一緒だった友達の芽衣からでした
秋子は、大学で同じ研究室の友達で、よくアウトドアに行くのが好きと言っていたので、おそらくケガをしたのだろうと見当をつけた
【いいよ。いつがいい?】
私は芽衣にメールを送り、お見舞いの日取りを決めました
入院の内容については聞かないままでしたが、無難にフルーツでも持っていこうと休日にフルーツを買いました。彼女は確かリンゴが好きだったはずなので、リンゴを多めにしてミカンを少しにしました
聞いたことが無い病院だったので、タクシーを拾って病院へ行きました。芽衣が来るまでまだ30分ほどありそうです
芽衣に病院に着いたとメールをすると、【少し遅れそうだから先に行ってて、ゴメン!】とメールが来ました
仕方なく、私は受付で秋子の友達だと告げて病室を聞きました
すると、雨が降る音が聞こえてきました。天気予報では雨が降るなんて全然いってなかったのに
それによって院内が暗くなったような気がしました
秋子の病室は5階だそうで、エレベーターを使おうと思ったら、丁度車いすの患者が乗っていきました
まだ時間があるのでゆっくり行こうと階段を使うことにしました
3階に着いた時、ガシャンと窓が割れる音が聞こえました
廊下を覗くと、特に誰も見当たりません。しかし、ガラスを踏む音がトイレの方から聞こえてきました
「大丈夫ですか?」
私はトイレに声を掛けると
「ああ、大丈夫、ああ、大丈夫」
と男性の声が聞こえました。大丈夫ならいいかと離れようと思った時、個室のドアをバタンと思い切り閉めたような音がしました
「本当に大丈夫ですか?」
声を掛けましたが、今度は返事がありません。男子トイレなので、少し躊躇しましたが「大丈夫ですか? 入りますよ?」と一応声を掛けてそーっと覗きました
しかし、中には誰も居ませんし、トイレの個室も全部開いたままです
あれ? 女子トイレの方だったかな? と女子トイレも見ましたが、誰も居ません
その時、近くで雷が落ちる音がしました
私はビクッとして廊下に戻ると、車いすの男性がこっちに向かってくるシルエットが見えました
まだ16時なのにまるで深夜の様に暗く感じました
その車いすの男性とすれ違うしかないのですが、何か嫌な予感がしたので女子トイレの中に入りました
車いすの動く音がトイレを通り過ぎました
私は芽衣にメールをしようと携帯を取り出したとき、またガシャンとガラスが割れる音がしました
ビクッとして後ろを振り向きましたが何もありません
怖くなってトイレから出ようとしたとき、ドアが何かにぶつかりました
「ごめんなさい!」
トイレに入ろうとした人にぶつかったのかと思い謝りましたが反応がありません
ガチャガチャとドアを開けようとしますが、少ししか開きません
その少しだけ開いた隙間からは車いすのタイヤが見えます
「ああ、大丈夫」
そうつぶやく声が聞こえました
「どいてください!」
「ああ、大丈夫」
私はらちがあかないと思い、無理やりドアを押すと、車いすごとずれました
ドアの隙間から体を無理やり通すと、誰も乗っていない車いすだけがありました
私は急いで5階に行き、秋子に会いたいと急ぎました
すると、すでに芽衣が着ていました
「どこに居たの? メールの返事もないし」
メールを見ると、あれから1時間も経っていました
私はあったことを話しましたが、信じてもらえなかったようです
幸い、秋子のケガは足の骨にひびが入っただけで、しばらくすれば治るという話でした
不思議な体験でしたが、実害はなかったのでよかったと思います
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