第169話 バスケ・シュート

体育館でボールのはねる音がする





間違っても頭がはねる音ではない





体育館の扉を開けると、バスケットボールを持った中学生の男の子が居た





「部活はもう終わりの時間だぞ?」





「あと1本、シュートが決まったら帰ります」





練習熱心な事はいいことだ。どうせあと1本で終わる気は無いだろうし、もう少しだけ許すことにした





「わかった、終わったらすぐ帰れよ」





俺は体育館の扉を閉めると職員室へ戻った





18時になり、そろそろ練習も終わっているだろうと体育館の鍵を閉めに行った





ボンッ、ボンッと体育館でボールがはねる音がする





「まだ練習していたのか?」





俺が扉を開けると、さっきの男の子がシュートポーズをとっていた





「あと1本、シュートが決まったら帰ります」





「はぁ、見ててやるからシュートしてみろ」





俺は仕方なく付き合ってやることにした





しかし、その男の子はボールをつくとが、シュートしない





「どうしたんだ?」





「シュートの仕方が分からないのです」





「まさか、ずっとそうやっていたのか?」





俺は呆れてため息をついた





「見てろ、こうやるんだ」





こう見えても俺は高校の時はバスケをやっていたんだ、少しだけな……





俺はラインに立つと、ボールを投げる





ボールは綺麗にリングを通った





「どうだ? 参考になったか?」





そう言って振り返ると、男の子は居なかった





シュート1本打つ間に体育館から出られるはずも無く、俺はあっけにとられた





まあ、次に出たときはシュートしろよ。俺は心の中でそう声を掛けた

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