第155話 主人公はC

今だから言うが、俺は高校に通っていたころに奇妙な体験をした





きっかけは授業中に寝ていた男子生徒の言葉だった





「授業中に黒板に目玉が見えた」





みんな、男子生徒が寝ぼけていただけだと思っているが、本人がしつこく主張するので肝試しとして確認することにした





クラスで参加者を募ったところ、男子4人が手を挙げた





1Fの男子トイレの鍵を開けておき、夜8時に集まることにした





仮に男子をABCDと仮名すると、Aが目玉を見た本人で、あとの3人がクラスの男子生徒だ





夜の8時近くになって急に一人が来れなくなったと電話が来た





「びびったのか?」





しかし、8時になって集まってみると、4人いる





「お兄ちゃんの代わりに来たよ」





来れなくなったDの代わりに妹のが来たらしい。電話ではそんなこと言っていなかったが、男ばかりより花があるほうがいいと思った





「へーっ、男子トイレってこうなっているんだ」





仮に女の子をD子とする。D子は、初めて入る男子トイレに感心している様だった





「そんなことより、宿直の先生に見つかる前に教室へ行くぞ」





俺達の教室は3Fで、3-2だ





教室を静かに開けて、懐中電灯で照らす





「俺はここで目玉を見たんだ」





黒板の左上の方を指さすが、俺たちは何も見えない





「何もないぞ?」





まあ、どうせそんなことだろうと思っていた俺たちは、ついでだからと隣の教室も調べたが、当然何もなかった





「あれ、D子は?」





俺達はD子が居ないことに気づいた





「居るよ?」





D子は教室のドアから片目だけ見えるように隠れている





「何してるんだ?」





「3-2から音がしたような気がして」





「本当か!?」





Aは喜び勇んで3-2へ走る





「おい、音を立てるなよ!」





Bは小さな声で注意した





「なんだこれ?」





Aは授業中に見たやつと違うのか、拍子抜けした声を出した。見ると、確かに、黒板には目があった。ただ、それはチョークで描かれていた





「Aのためにわざわざ描いてくれたのか?」





BはD子にそう聞いた





「えっ? 私描いていないよ?」





「満足したか? 見つかる前に消すぞ」





Bは黒板けしでチョークで描かれた目玉を消そうとした





しかし、黒板けしでは消えなかった





「え? なんで?」





Bは指でなぞるが、チョークがつく様子もない





その瞬間、目玉がBを見た





「わっ!」





びっくりして俺たちは逃げ出した





我先にとみんなで1Fの男子トイレに走り、窓から逃げ出す





校門まで戻ったところで、D子が居ないことに気づいた





「やべっ、はぐれたか?」





「まあ、最悪でも宿直の先生に見つかって怒られるだけだろ」





「それにしても、目玉って何だったんだろうな」





そう言って別れた





次の日、Dにその話をしたが、妹なんていないから、D子なんて知らないって言われた





今ならわかる。D子は昔、学校で行方不明になった女子生徒で、犯人は用務員だった





用務員は、バラバラにしたD子の体を学校中に隠したらしい





もしかしたら、今頃その高校では、いろいろな噂があるかもしれない

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