第137話 餓鬼道

腹が減った





生前は、食べ物を粗末にしてきた





嫌いなものは捨て、食べきれなければ捨て、酒を飲んでおかずは捨て、捨て、捨て





すると、餓鬼道に落ちたらしい





食べ物は口に入れると無くなり、水を飲もうと口に入れると無くなり、もう砂でもいいやと口に入れても無くなり、でも、空腹でも死なない





周りを見ても、栄養失調で腹ばかり膨れている人間ばかりで、腹以外は骨と皮ばかりだ





唯一食べても無くならない物がある





それは、自分の体だ





指を食うと、腹に入り、また指が生える





足を食うと、腹に入り、また足が生える





そうして空腹だけど食べ続ける





いつの間にか、俺の足を他の人が食べていた





いつの間にか、俺の手を他の人が食べていた





いつの間にか、俺の胴を他の人が食べていた





いつの間にか、俺の頭を……





目が覚めると、俺は赤ん坊になった。今度こそ食べ物を無駄にしないと





俺の横には、沸騰した鍋が置かれていた

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